みっちホーム

イメージは伝わらないものと思っておく

「もっと南フランスっぽいイメージにしてほしいのよね」


これは隣の打合せブースから聞こえてきた会話です。ちらりと振り返ってのぞいてみると明らかに奥様は不満そうなご様子で設計士さん(?)を見つめていました。さて、この奥様の南仏風のイメージとは一体どういうふうなものなのでしょう。雑誌の特集で載っていた綺麗な写真を頭の中でうかべているかもしれません。または旅行先で見て感動した風景を思い浮かべているのかもしれません。が、奥様の頭の中のイメージというのは残念ながら相手の設計士にも、旦那様にもには一切伝わりません。宇宙人(?)のようにテレパシーでも出来ればいいのに、人間って不器用ですよね。

設計士なんだから、住宅会社なんだからそれくらいわかるだろう?という意見もあると思います。しかし、「それくらいわかるだろう」というのが案外あとでトラブルの元になる原因だと僕は思います。信用するなと言っているわけではありませんが、もし理想のイメージがあるのなら、絵にするなり、写真を持っていくなり、かならず相手と共有できるものを用意するのが良いと思います。

最初は気に行った雑誌の写真や、ホームページに掲載されている家の写真などをかたっぱしからかき集めて、そこから自分の好みを分類し、選択していけばいいかと思います。ただし、女性は集めるだけ集めて結局あれもこれもやりたくてわけわからん!となる傾向が強いようですので、(笑)、旦那様に分類していただくのがよいかも。
標準規格品を探そう

イメージがばっちり伝えられればあとはもう住宅会社にお任せで大丈夫かというとそうではありません。たいていイメージというのは理想系なので、お金がかかります。あれもしたい、これもしたいとなると費用はどんどん膨らみます。よほどの大金持ちでないかぎり、予算という制約があります。当然、入居時期もある程度決まっているでしょう。希望を予算という枠の中で考え、さらにスケジュールも考慮にいれなければなりません。

注文住宅と言っても本当に一から木を削りだして製作しているかというとそうではありません。住宅会社もそれではコストがかかりすぎるので、規格化された部材を沢山用意しています。希望がまとまったら、今度はお願いする住宅会社で持っている規格化された、いわゆる標準仕様品が自分の希望にあうのか、あわないかという視点で検討を進める必要があります。企業向けの基幹システム用のソフトウェアを販売する我々の世界ではこれを「FIT&GAP」と呼んでいます。標準で用意している仕様で全て満たせれば、全体のスケジュールも大幅に圧縮されることが出来ます。

しかし、標準で要求を満たせない場合、特注という形で作ってもらうことにどうしてもなります。ソフトウェアの世界ではこれを「カスタマイズ」と呼びます。カスタマイズはお金がかかります。なぜなら機械がプログラムを作成してくれるのではなく、技術者がパソコンの前でガリガリプログラムを書いていくからです。つまり、人件費と稼動が発生するのです。住宅の世界もおなじで、たとえば部屋にぴったり合う本棚を作ってほしいと依頼すると「ぼったくり?」と思うような値段が見積に出てきます。ところが、壁にぴったりとは合わないがサイズが予め決められた本棚は住宅会社で持っていることもあります。こんなときは、住宅会社側に「御社の標準品ではどうか?」と必ず確認してください。どこに妥協点を見出すかが大事ですが、このように規格化された商品をきちんと把握することはコスト削減の第一歩です。

要求を重ねていけば費用も高騰するというのはよく聞く話ですが、なぜ高騰するかイメージできましたでしょうか?
要求仕様書の重要性

最初はイメージ写真をスクラップしながら構想を練っていく程度でよいと思います。それをグループ化し、自分の作りたい家に対する要望を要求仕様書「RFP」という形で一度まとめることをお勧めします。別に難しい書類を作れといっているわけではありません。

たとえば、2階にあがる階段ひとつ取ってみても、

・リビング階段にしたい
・直線階段ではなく、踊り場を途中で用意してほしい
・階段の幅は標準より大きく2mにしてほしい(ちなみに、モデルルームの階段幅は特注品ですよ!)
・階段下には収納スペースを設けてほしい
・階段横には写真が置けるスペースを用意してほしい

と、こんなかんじで、家にあるであろう設備ごとに希望(要望)を書き出していきます。この作業は絶対夫婦ですべきですね。どんな形にまとめりゃいいんだ?という方は僕の作成したRFPがありますので、参考にしてください。厳密にいうと精度はかなり粗いのですが、参考にはなるのでははないかと思います。どうしても整理できない場合はその点を記述して「迷っているんです」と設計士さんに相談するのが良いと思います。
議事録を作ろう

イメージを整理し、要求を紙にまとめ、これをもとに住宅会社と週1回ペース程度で検討を進めていくのですが、お互い人間です。どうしてもずれたり、勘違いしたりしてしまうことがあります。これを防ぐために話し中は必ず、メモを取り、

日時
場所
参加者
・決定事項(決定した仕様、たとえばケーシングの色、ふすまの色、壁紙の色、と型番など)
・未決定事項(その場で決められなかったこと)
 次回住宅メーカー側からの提案事項
 こちらからの要望事項

とマークをしておいてください。
できれば、メールにこの内容を記載し、相手に送るのが良いと思います。翌週の打合せはまずこのメールの内容を元に前回の未解決事項を検討し、その後、新しい検討に入るという流れになります。何を決めていくかの大きな流れは住宅会社の方におまかせするとしても、確認事項はかならず、こちらの主導で進めてください。沈黙=承認と認識されます。

人間の記憶は曖昧ですし、特に注文住宅となると「もうそっちで勝手に決めてもいいよぉ〜」と放棄したくなるくらい決めることがたくさんあります。打合せ終るとぐったりというケースがたびたびありました。翌日になると半分以上忘れてますので、どうか、打合せ終了後にちゃっちゃとまとめて、議事録を作成してください。面倒臭いですが、あとでトラブルになる元凶である「言った、言わない」をまず避けることが可能になります。もうひとつ、家が完成したとき、よくがんばったなあという証にもなりますよ。
書類はきっちり読もう

膨大な確認作業を経て、工事仕様書が完成します。これが双方合意が取れるといよいよ工事スタートとなります。具体的にはメーカーは工事仕様書の内容に沿って必要部署に伝達を行い、購買、製造、加工を進める手配を行います。この書類は施主から仕様書になりますので、しっかりとチェックしてハンコを押してください。前項でも書いたとおり、注文住宅の場合、選択する項目数は半端ではありません。当然、住宅メーカー側も品番間違えたり、型番間違えたりします。それを防ぐためにはこちらでチェックするしかありません。一番私が遭遇して多かったのが、色違いでした。また仕様書は合っているのに、現場に搬入されてきた靴箱とカーテンボックスの色が違うということも発生しました。何事も人任せにしているとあとで大変な目にあいます。
現場を回ろう

中学生のとき、父の友人である造園業の社長から「仕事で訪問した家の奥様にお茶やお菓子を出してもらい、「休憩してください」と言われるだけでかんばろうとう気になる」と聞いて、仕事とはいえ、これが本音なんだなと思ったのが強烈な印象として残っています。現場の人たちに気持ちよく仕事をしてもらうのは、住宅会社の現場監督の仕事じゃないかと思われがちですが、施主のみなさまは絶対に現場に足を運び、大工さんたちに声をかけてください。

突然現れて写真を撮影しまくってあとで現場監督だけにここがおかしいんじゃないのかと説明を求めるよりもその場で指摘して確認するほうが、大工さんたちもずっと楽です。ただ、請負で作業をしているとはいえ、感情を持った人間のすることですから、夏なら冷たいものを、冬なら暖かいものと、さっと食べられるお菓子や差し入れをするのが良いと思います。

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